視神経脊髄炎の病態について
視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica, NMO)は、中枢神経系、特に視神経と脊髄を主に侵す炎症性疾患です。別名デヴィック病とも呼ばれ、急性発症し再発を繰り返す特徴があります。視神経脊髄炎は、以前は多発性硬化症(MS)の一形態と考えられていましたが、現在では異なる疾患として認識されています。
病態のメカニズム
NMOは自己免疫疾患であり、免疫系が誤って自己の組織を攻撃します。特に、アクアポリン4(AQP4)という水チャネル蛋白に対する自己抗体(NMO-IgG)が関与しています。これにより、中枢神経系の特定の部位、特に視神経と脊髄の炎症と損傷が引き起こされます。
主な症状
- 視神経炎:
- 視力低下、視野欠損、眼痛を伴う急性視力障害が発生します。
- 両眼に影響を及ぼすことが多く、重度の場合は完全な失明に至ることもあります。
- 脊髄炎:
- 脊髄の炎症により、四肢の麻痺、感覚異常、排尿・排便障害が生じます。
- 炎症が広範囲にわたるため、症状は広範で重篤です。
診断
NMOの診断は、臨床症状、MRI所見、および血液検査によるNMO-IgGの検出を組み合わせて行います。MRIでは、視神経および脊髄に特徴的な病変が確認されます。
治療
NMOの治療は主に以下の3つのアプローチに分かれます:
- 急性期治療:
- ステロイドパルス療法や血漿交換療法が行われます。
- 再発予防:
- 免疫抑制薬(アザチオプリン、リツキシマブ、ミコフェノール酸モフェチルなど)を用いて再発を防ぎます。
- 症状管理:
- 理学療法や作業療法を通じて、機能回復と生活の質の向上を図ります。
予後
NMOは再発を繰り返すことが多く、早期診断と適切な治療が重要です。適切な治療を受けることで、症状の進行を抑え、生活の質を保つことが可能です。しかし、重篤な再発が続くと、永続的な障害を引き起こすことがあります。
まとめ
視神経脊髄炎は、中枢神経系に重大な影響を及ぼす自己免疫疾患です。アクアポリン4に対する自己抗体の関与が明らかになっており、早期の診断と適切な治療が患者の予後を大きく左右します。再発を防ぎ、症状を管理することで、患者の生活の質を向上させることが重要です。
参考文献
- Wingerchuk, D. M., Lennon, V. A., Lucchinetti, C. F., Pittock, S. J., & Weinshenker, B. G. (2007). The spectrum of neuromyelitis optica. The Lancet Neurology, 6(9), 805-815. doi:10.1016/S1474-4422(07)70216-8
- Pittock, S. J., & Lucchinetti, C. F. (2016). Neuromyelitis optica and the evolving spectrum of autoimmune aquaporin-4 channelopathies: a decade of progress. Nature Reviews Neurology, 12(9), 473-484. doi:10.1038/nrneurol.2016.116
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