オリゴクローナルバンド(Oligoclonal Bands, OCBs)について
概要
オリゴクローナルバンド(OCBs)は、脳脊髄液(CSF)中に検出される特異な抗体のバンドのことを指します。これらのバンドは、多発性硬化症(MS)などの中枢神経系(CNS)の慢性炎症性疾患の診断およびモニタリングにおいて重要なバイオマーカーとなります。
生物学的背景
OCBsは、免疫系が特定の抗原に対して持続的に反応し続ける結果として産生される複数の抗体の集合です。これらの抗体は、脳脊髄液中での電気泳動分離によって検出されます。OCBsの存在は、通常、脳脊髄液と血清の比較を通じて確認されます。
多発性硬化症との関連
多発性硬化症は、CNSの慢性炎症性疾患であり、ミエリン鞘の脱落を特徴とします。OCBsは、多発性硬化症患者の約85-95%で検出されます。OCBsの検出は、MSの診断をサポートするために用いられますが、MS以外の疾患でも見られることがあります。
診断手法
OCBsの検出には、主に等電点電気泳動(IEF)と免疫固定法が用いられます。これらの手法により、脳脊髄液中の抗体の分布を詳細に解析し、血清中の抗体との比較を行います。
- 等電点電気泳動(IEF):
- 電場の中でタンパク質を等電点に従って分離する方法。
- 高感度であり、微量の抗体を検出できる。
- 免疫固定法:
- 分離されたタンパク質を特異的な抗体で固定し、可視化する方法。
- IEFと組み合わせて使用されることが多い。
臨床的意義
- 多発性硬化症(MS):
- OCBsの検出は、MSの診断基準の一部として重要です。
- MSの病期や治療効果のモニタリングにも用いられます。
- 他の神経疾患:
- 神経梅毒、ライム病、サルコイドーシスなど、他の慢性炎症性疾患でもOCBsが検出されることがあります。
- 診断の際には、他の臨床的および検査所見と組み合わせて評価する必要があります。
参考文献
- Thompson AJ, Banwell BL, Barkhof F, et al. Diagnosis of multiple sclerosis: 2017 revisions of the McDonald criteria. Lancet Neurol. 2018;17(2):162-173.
- McDonald基準の改訂に関する論文で、OCBsの診断的役割が詳述されています。
- Freedman MS, Thompson EJ, Deisenhammer F, et al. Recommended standard of cerebrospinal fluid analysis in the diagnosis of multiple sclerosis: A consensus statement. Arch Neurol. 2005;62(6):865-870.
- 多発性硬化症診断における脳脊髄液分析の標準的手法についての合意声明。
- Jarius S, Franciotta D, Paul F, et al. Cerebrospinal fluid findings in neuromyelitis optica: A study of 124 patients. J Neurol Sci. 2011;306(1-2):82-90.
- 視神経脊髄炎における脳脊髄液所見の研究。
これらの参考文献をもとに、OCBsに関する理解を深めることができます。OCBsは、神経疾患の診断および管理において重要なマーカーであり、臨床的に高い価値を持っています。
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